古い高欄は遠目で黒に見えてましたが、いざ外すと、銀箔が酸化して黒くなっている様子。仏具で銀箔を使うことは滅多にありませんが、銀を金に見せる細工を施したものが稀にあります。
擬宝珠の部分の裏面に黄色の着色料が残ってました。銀箔の上から黄色を塗ることで金色に見せていたと思われます。銀箔は硫化現象で黒く変色するので、表面を塗装し酸化変色を抑え、その着色料の色味により金色に見せたりする技法があります。この硫化現象を逆に巧み利用したものに尾形光琳の紅白梅図の黒い水面模様がありますね。
銀箔への着色は酸化防止だけではなく色表現の一環として用いられますが、主に酸化防止として表面塗装したものに金箔系(洋箔)壁紙などがあります。銅と亜鉛の合金の洋箔(真鍮箔)に酸化防止の透過塗料を塗った内装用クロス材です。もともと代用金箔と呼ばれている洋箔なので素人目にはパッと見金箔との違いは見分けにくいのですが、表面処理をしているとはいえ経年での酸化変色は避けられないので、基材に洋箔と表記してあるものは金箔ではないという注意が必要です。クロス材はそれなりに高いですが、洋箔自体はかなり安価で扱い易いのでちょっとした店舗内装などにはいいかもです。
というわけで、元は金色だったようですが、一般的には高欄は本朱で塗ります。今回は宮殿が古いままということもあって浮いた感じにならないよう、本朱、本黒、海老茶色にて三色にて検討していただきまして……臙脂色に。擬宝珠と飾り彫りは金箔にて。
金具は無しで。祖師前・御代前の高欄は目立ちませんからね。