40年ほど経った仏壇とのことでしたが、状態が良かったので必要箇所だけ塗り替える「半塗替え」を提案しました。
戸裏と壁三面は塗り替えて箔押しが必要でした。
金具も錆が出てしまうと洗浄だけではカバーできないので本金メッキ直し。
彫刻・宮殿周りは洗浄だけで良さそうでした。
分解洗浄後、壁の割れ補修。
合板を使わず、杉などの板を使用している場合、この大きさになるとほぼ継いであります。その継ぎ目の割れ止めとして和紙や布を貼るのですが、写真のように和紙の書物が使われていることも多いです。粗悪なものは新聞を貼ってあったりするものもありますが…。書物や手紙に使われるような和紙は丈夫なので割れ止めには最適なんですね。(自分は広い面積の場合は寒冷紗貼りますが)
今回は割れ自体は出てませんでしたが、和紙と下地が浮きはじめていたので、剥離し、寒冷紗であらためて割れ止めしました。
カシュー下地二号と砥の粉を混合したものを数回にわけてヘラ付けし埋めています。
漆器の下地使われる生漆と砥の粉を混合したものを「錆」と呼びますが、カシュー下地二号はそれの代用といったところです。(漆器には使えません)
下塗り後、艶消し箔下。
箔押し直後。箔足(はくあし)を揃えるのが技術です。押したては空気が入ってますが、金箔は目に見えない微細な孔がありますので、時間とともに抜けていきます。
しばらく置いて、箔が落ち着いたところで真綿で優しく押す。箔押しと呼ばれる所以です。
ご依頼いただいた小売店さんのリクエストにより「縁付金箔」を使用しました。
わかりにくいですが薄っすら畳目のようなものが見えませんかね…。金箔を打ち延ばす際の和紙目です。2020年に縁付金箔(金沢)がユネスコ無形文化遺産に登録されました。逆に言えばそれほど使用量が減ってるということでしょうか。
ちなみに自分はずっと「エンツキ」と呼んでましたが「エンツケ」が正式な呼び名と知りました。誰か指摘して…。
組立。向壁が真ん中で割れてますが、三尺以上の大きさの古仏壇ではよくある仕様です。中央は御本尊が置かれるので見えない、といったところでしょうか。
出来上がり。
欄間彫刻や宮殿垂木から上の部分は洗浄のみ。障子も金襴紗の張替えのみ。基本的に戸裏・壁の箔押しのための塗り替えがメインで、あとは戸障子を開いた状態で見栄えに影響する部分を塗り替えました。
三尺五寸(左右壁框内側の寸法)ともなると、総塗替えにはそれなりの予算が必要になります。仏壇は設置したら基本的に開きっぱなし。戸前や見栄えに影響しない箇所が洗浄でいけるようあれば、半塗替えをおすすめいたします。
金箔の種類は「縁付」と「断切」に大別され、それぞれ号数(金の含有量)があり、加えて「三枚掛」「四枚掛」といったような厚みを指す言葉があります。今回は「縁付・二号・三枚半掛」を使用しました。
…
(写真はお客様確認済みの物件のみ掲載しています。転載・転用は固くお断りいたします)