通常は黒塗りの壁框・戸裏框・障子框などが全て金箔のものを総金と呼んだりします。大阪型の仏壇が総金である場合が多いですかね。
ちょっとわかりづらいですが、欄間彫刻下に長押が通ってないものは大阪型と呼ばれる場合が多いです。大阪仏壇と大阪型仏壇はまた別で、大阪仏壇をモデルに作ったものが大阪型仏壇。こちらは大阪型。
中段と下段の上面にまで蒔絵が施してある豪華な造り。
ですがベースが塗装合板で、基材が塗面強度に負け、めくれ上がったような形で亀裂が入ってました。こうなってしまうと下段そのものから作り替えることになります。
中段前には金具に似せた蒔絵と凝った仕様。ですが、こちらも上面の塗面に亀裂が出はじめていたので作り替えました。
横壁も塗装合板。釘穴周辺から亀裂がでていました。
塗装合板は1970年代以降の量産仏壇によくみられます。樹脂塗装された合板もしくは樹脂を貼り付けた合板を使うことで下地・中塗り工程を省き、上塗りに高硬度の樹脂塗料塗り、金箔を押すといった代物。
樹脂塗装を否定するわけではありませんが、この時代は柔軟性のない樹脂塗料が使われている場合が多く、塗面の強度が基材の合板より強すぎてちょっとした衝撃で亀裂が入ったりするものが多い。おまけに手塗り仏壇特有のぽってりとした塗面を再現するために厚塗りの傾向があるので、そのことが余計に塗面割れの原因になっていると思います。
古塗装の研ぎ出し→下地→中塗り→上塗り→箔押し。
戸の中板に亀裂はなかったのでそのまま使いました。戸框の抑えが効いてるのかもしれません。
下段も木地から作り替えて、新たに蒔絵師に蒔絵をお願いしました。
横壁・向壁ともに木地を作り替えました。宮殿・欄間類も全て塗替え箔押し。
総塗替え、出来上がり。
仏具類も塗替えて仮セッティング。
合板や樹脂塗料が悪いような書き方しましたが、合板は明治時代から楽器や家具など広く使われてますし樹脂塗料もしかり。シナベニヤは今でも仏壇に最も使われる合板です。1970〜1980年代は金仏壇も作れば売れるというような時代があり、その時代の量産仏壇にはコストや作業性が優先されていたと思うので、エビデンスのないまま相性の悪い材料が使われている「場合がある」と考えたほうがよいかと思います。当時最適な方法であっても年月とともに陳腐化するのは仏壇に限らずよくある話ですね。
元の材質がよくないことを伝えるのは心苦しい時もありますが、予算オーバーをご理解いただき今回は必要箇所を作り替えることができました。
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