三方開(さんぽうひらき)、外三方(そとさんぽう)と呼ばれる仏壇の塗替え。三方開仏壇とは、横壁の半分が戸として開く仏壇のこと。一般的な仏壇は前だけ開くので、前開きと呼びます。
三方開の特徴は、戸が大きく開くことで仏壇の内部を広く見せ、大柱の存在感を含め寺院内陣のような豪華さがあるところ。
下段や膳引きは、花立の水やお供えなどで、湿気や仏具の落下傷による痛みが起きやすい部分。この部分の痛みや線香の煙汚れは、熱心に向き合ってこられた証でもあります。
使用されている成型板や彫刻(樹脂)の感じからすると、1970〜1980年代あたりに製造された仏壇と思われる。彫刻が樹脂であることを伝えるかは悩ましいところですが、材質についてはできるだけ伝えるようにしています。樹脂彫刻は、仏壇の供給が間に合わない時代の効率化による産物で、一概に悪いものというわけではないですし、木彫がすべからく良いかといえばそうでもないです。何より、材質で向き合った時間の価値が損なわれるものでもないですから。そのうえで木彫を希望されるようであれば作り直します。
塗替え箔押しの通常作業を経て、組み立て。
大柱を立てながら長押を連結させ目長(欄間)をはめ込む、三方開きの組み立てで最も気を遣う部分。長押がホゾ組みになっているものの、上台輪をはめるまで大柱は固定されない。
下段下の膳引きは仕舞うことがないので出した状態で固定できるようにしてほしい、との要望で新たに作り直しました。確かに設置したら花立などの具足を置くので仕舞うことがない。ならば、固定していたほうが不意にぶつかった際に具足の転倒などを防げる。常識に慣らされてしまった作り手には思い付かないアイデアです。(引き抜くことはできます)
総塗替え、出来上がり。
元々高級な部類の三方開仏壇ですが、今はますます減少しています。古い三方開きは、組みの構造も伝統を踏襲してありますので、維持できる環境であるならばぜひとも永く置いていただければと思う次第です。
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