2-3.欄間修復:エポキシ充填による木地補修について【龍/中央】

前回、古い彩色を落とし虫食いの深刻な状態の報告で終わってましたが、その続きを。
8月初旬に終えた作業です。

文化財などの木彫になりますと、虫食いなどの木地補修にはアクリル系充填材を使用します。アクリル系充填材の利点は弾力性があることです。木材は収縮しますので、その収縮に余計な負荷がかからないようにアクリル系が適しているのではないかと思われます。

今回、木地補修に使用した充填材はエポキシ樹脂を使用。エポキシには弾力性がありませんが、強度が高く、目減りもなく、今回のようにすでに木材としての態をなしていない素材を固める(=樹脂化)させることに関してはエポキシしかないでしょう。二液結合で硬化するので密封状態でも必ず硬化するというところも利点です。
すでに彫刻内部が虫食いでスポンジ化が進み、表面のみならず最深部まで浸透させる必要があったので、粘度の低いエポキシ(100mPa.s前後)を使うことにしました。(アクリル系充填材は粘度が高い)

作業手順は、まず注射器で各所からエポキシを深部に浸潤させ強度を確保。必要に応じ成形不能部分を切断。

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芯を通し新たな彫刻を接着。

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表面の虫食いを別のエポキシ系パテで埋める。

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このような順序にて木地補修が完了しました。

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木地補修前の状態と比べるとわかりやすいです。

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手の表面は欠損していましたが元の彫刻を想像しながら破綻しないように。

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断面の、黒い部分が虫食い痕です。

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新たな彫刻の接着面積確保のためにも充填の必要がありました。

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欄間三枚の木地補修、使用エポキシ8kg、作業期間二ヶ月。長かった…。

左右の欄間についてはこちら。
欄間修復:木地補修【鳳凰/左】
欄間修復:木地補修【鳳凰/右】