洗濯(煤抜き)について

住まいの引っ越しや建て替えなど、住環境が変化した際に仏壇をどうするか…。
新たに仏壇を買う。既にある仏壇を塗り替える。いずれもそれなりの予算が必要になります。また買おうにも、近年、仏壇の原産国表示が義務付けられ、既成品のほとんど海外製であることが周知され、抵抗を感じる方も多いです。
低予算時の一つの選択肢として、洗濯(煤抜き)という手もあります。

予算的な問題以外にも、最近の年配の方は仏壇を次の世代に残すのも迷惑だろうと考える方も多く、自分が生きてるうちは今あるもので済ませ、あとは処分するなり受け継ぐなりは次の世代にまかせようと、とりあえず洗濯を選択される場合もあります。
仏壇に限らず土地や財産もそうですが、昔は残すことが次の世代への思いやりでしたが、今は所有者が現役でいる間に処分することも次の世代への思いやりである場合もあります。

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40年もの。

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金箔の擦れなどは少ないですが、線香の煙油による茶色い染みが薄っすらと全体に。金箔は非常に薄い金属なので、閉めきった環境に置いていると表面に結露が出やすく、線香の煙と日常の埃が重なって染みがつきやすくなります。もちろん日々のお参りに熱心であればこそです。この程度は洗えば落ちます。

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木地の湿気が釘穴を通して錆に。メッキ直し、もしくは交換。

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金箔と同じく金具が茶色になっているものは線香の煙油が原因。それだけ手を合わせておられた証拠でもあるので、汚れ、と一概に言っていいものかどうか。

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古い家の仏間は暗いことが多く、埃があまり目立たなかったりするので、そんなに汚れていないように感じます。まして見えない部分の埃の堆積には気付けません。

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分解せずに洗う方法もあるようですが、できるだけ分解して洗うことをオススメします。
分解するとほとんどの古仏壇の内部にはゴキブリの住処の跡があったり、ネズミの餌屑、虫の死骸などが残っています。 表面は洗い流す程度でも、目に見えない場所こそしっかり洗ったほうが良いです。

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仏壇に関しては、古いものが一概に良いとは言えません。 1950〜1980年代に作られた仏壇は、金紙や樹脂彫刻を使ったものが多く見られます。当時は作れば売れると言われた時代でしたので、粗悪な素材も乱造されています。今回のものは彫刻の当り板に金紙が多用されている程度でしたが、このような場合は作り替えるほかありません。

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戸前は盛大にカビが発生してましたが、洗えば落ちそうです。
漆は年月を経て硬化しますが、硬化に伴い表面の油分が抜け、目に見えないレベルですが凹凸が出来ます。そこにカビが根をはりやすくなります。特に戸前は開いたら仏間の脇に折りたたむので、陰になり、湿気もたまりやすくなります。年に一度でも乾拭きするだけでもずいぶん違います。

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苛性ソーダで洗浄。擦ると金箔が剥げるので、さっと液の中を通し、流す程度で。これで線香の煙油や埃などは落ちます。洗ったあとは、一週間ほど自然乾燥させ、塗替え・箔押し替えが必要な箇所を選別し、あとはいつも通りの作業。

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二尺台付仏壇 東本願寺。洗濯補修、出来上がり。

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塗替えが必要だった部分は下段と、箔押し替え部分の箔下のみ。金箔押し替えは、引き戸の中板と家紋彫刻、彫刻の当り板、下台引き戸の面金。

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稀に水溶性箔液などで箔押してあるものは、水に通しただけで金箔が落ちたりします。そうなると箔を押し替えるしかありません。漆でしっかりと箔押してあるものは、擦らないかぎり簡単には落ちません。元がしっかりとした仏壇は、洗浄とメッキ直しだけでもずいぶんと新しくなった感じが出ます。

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組子は洗いのみですが、金襴紗の張り替えが引き立てます。

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洗濯、一部補修、メッキ直しのみですが、新しくなった仏間でまた新たな気分で向き合っていただければ幸いです。

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