「堂造(どうづくり)」と呼ばれる仏壇があります。
通常、宮殿(くうでん)は仏壇本体に固定させますが、堂造りは宮殿を出し入れできるようになっています。言うなれば、お寺の内陣中央にある宮殿(御本尊を安置する厨子)をそのまま小型化したものを、仏壇の中に収める仕様。字のごとく、堂(本堂)の造り。寺院内陣の再現が特徴と言えます。
ゆえに、技巧を凝らした宮殿と、それを収める仏壇本体に高い木地技工が要求され、部材の多さ、仕組みの複雑さから、最高級のものと位置付けられています。通常の組立て方とは手順が違うため堂造を組みたがらない職人もいたりします。
さらに横壁の半分が開閉する「三方開き(さんぽうびらき)」と呼ばれる仕様で、今ではずいぶん少なくなった三方開き堂造の高い技術に触れることができました。
今回は総塗替えではなく、部分塗替え、箔押し替え、金具直しがベース。
宮殿を抜いたところ。向壁の前に、中央二本の堂柱に挟まれた迎門板(ごうもんいた)があることも寺院内陣再現の特徴の一つ。
金具一つ一つが分厚い。鋳物ではない。
宮殿屋根、枡組、堂枡は洗いのみ。…の予定。
生き生きとした彫りの深い欄間彫刻も洗うだけで良さげです。
箔押し替えと言っても、箔下は塗らねばならないので、いつもの作業。
洗浄→ペーパー→木地直し→下地→研ぎ→下塗り→研ぎ→箔下→箔押し。
金具メッキ直し。多い。現在の一般的な鋳物金具と違い一つ一つが重い。
宮殿の箔押し替えは、小柱・礼盤・虹梁にて。堂造りの宮殿は側面も手抜きなし。(通常の宮殿は、仏壇本体に固定するため側面の破風などは無い)
現在の柱金具は鋳物による一体型が多いが、昔ながらの真鍮手打ち金具はバラバラになっている。重なりの調整に当紙を挟み込み、釘打ちによる不要な凹みを防ぐ。
ちなみに元の金具の当紙には手紙が挟まっていた。日付は昭和二十五年、場所は京都市、職人と故郷の家族のやりとりだった。
組立。向壁は三枚割り。真ん中には迎門板が手前にくるので黒のままで。
中敷(ちゅうじき)は横壁奥框への差し込み式。脇障子の軸受けも兼ねる。
堂造は釘による固定が極端に少ない。この中敷と、欄間下の長押(なげし)で上下を囲み、壁・柱・障子を固定することになる。
中段下の引き出しと引き戸の框を兼ねる地幅(じふく)と、柱束で中段を支える。中段以降は通常の仏壇同様、積み上げて組む。
中敷と同じ要領で長押を差し込み、壁と中柱(横壁框前の二本の柱)を固定。中段から長押に伸びる中柱は、次の堂長押(どうなげし)の連結部材となり内部固定の要となる。
壁内に堂柱を立て、中柱のホゾを起点に堂長押をはめ込む。
中敷と長押を大柱で連結させ、軸受けに障子をはめ込む。大柱、障子をはめ込むために少し緩めていた長押を、横壁奥のホゾにしっかり押し込み段回りが完全に固定される。
柱、長押まわりが固定されたところで、すずめ挾間・菱組を差し込み、平桁(ひらげた)で固定。その上に堂枡(どうます)を組む。堂柱、堂長押から堂枡に至る部材も寺院内陣再現である堂造の特徴。
欄間を差し込む。あとは上台輪を組み、戸を連結させた脇戸を軸受けにはめ込み、完成。組立て二日がかり。
三尺五寸堂造三方開き、出来上がり。
納品。仏間一間。収まり良し。
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