5-3.欄間彩色:胡粉下地から水干顔料による彩色完成まで【龍/中央】

5月9日に本堂外陣より取り外した欄間彫刻。11月19日に補修と彩色が完成しました。実作業日数は72日でしたが、各作業に必要な乾燥期間や他の仕事との兼ね合いなど、半年間の作業期間は長くもなく短くもなく。

では前回の金箔押しの作業に続き、胡粉下地からいよいよ彩色に。
顔料を金箔の上に直接塗ると定着しにくい上、色によっては下の金箔が透け発色に影響があるため、下地胡粉を塗ります。粉末状である水干顔料は不透明ですが、胡粉(白)の上に色を乗せたほうが発色が美しいです。

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金箔は割と丈夫なので、失敗しても直後なら拭き取れます。乾燥してしまうと取れないのは当然ですが、金箔も着かなくなってしまうので、胡粉下地は計画的に。

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粉末顔料を砕き、指で混ぜていく。
納期の短いものや屋外のものはアクリル塗料を使ったりしますが、今回は水干顔料にて。乾燥後の独特の質感、マットでありながら鮮やかな発色、混色せずとも再現できる伝統色。水干顔料を使う理由です。

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ボカシは使いますが、混色はしないようにしました。何十年後かに行われるかもしれない修復時に色を確定させておいたほうが楽だからです。まだ見ぬ職人さんへ。(右鳳凰)

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厚塗りは色割れの原因になるので、ほどよい粘度で。(右鳳凰)

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実際取り付けられたらほとんど見えないだろうなと思いつつ…コマンドZの無い緊張感。(左鳳凰)

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出来上がり。

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龍の鱗に、一枚一枚群緑色のボカシを入れようかと悩みましたが、元が金箔のままだったことと、未修復の欄間との兼ね合いを考慮してそのまま金箔のままにしました。もう少し年月が経てば金箔も落ち着くでしょう。

紅、洋紅、圓子(えんじ)の三色グラデーション。元の彫刻が素晴らしいので、彩色したことでフラットにならないよう立体感を。欄間は下から見上げることになるので強調するぐらいで。

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元の虫食いだらけが懐か………しくない懐かしくない。

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ご門徒のみなさんへの作業公開録として開始した欄間補修記録。ひとまず更新終了です。その他作業はまたいずれ。

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他の欄間についてはこちら。
欄間彩色:彩色、完成【鳳凰/左】
欄間彩色:彩色、完成【鳳凰/右】

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これまでの工程
4-3.欄間彩色:金箔押し工程について【龍/中央】
3-3.欄間彩色:下地について【龍/中央】
2-3.欄間修復:エポキシ充填による木地補修について【龍/中央】
1-3.欄間修復:古い彩色を落として見える過去の仕事【龍/中央】
5月9日、外陣欄間彫刻彩色改修の取り掛かり